スタイリングコーディネーター

五月女則子

Noriko Saotome

東京生まれ。インテリアデザインを専攻。
㈱グランド ジョージ伊藤に師事し、トータルなスタイリングコーディネイトに従事。開拓精神旺盛な師についてシズルも追求することとなる。主にCM、ポスターなど広告制作で活躍中。

写るものすべてをスタイリング

 仕事の中でも、特にビールやウィスキー、お茶などの飲料関係、シズル、テーブルトップのスタイリングが多いという、スタイリングコーディネイターの五月女則子さん。そのキャリアは、すでに20年だ。
 もともとは設計やインテリアを学んでいたという五月女さん。食器が好きで、食器の輸入代理店に就職。その店に、スタイリストという職業の人たちがよく出入りしていたことから、この仕事に興味を持ち、アシスタントとして働き始めた。
 「用意すべきものを選ぶ時には、選択の方向性を決めつけないで、できるかぎりあらゆる角度から考えます。そして、それを見つけ出して撮影現場まで持っていくことにも、たいへんなエネルギーが必要です。骨董屋さんから品物をお借りするにしても、電話1本で済む話ではありませんから」。
 実際の五月女さんの仕事の内容は、実に多岐に渡る。
 「私の師は、衣裳をメインに写るものすべてをトータルにコーディネイトする、スタイリングコーディネイターです。私自身もグラスなどの器だけでなく、インテリアやスタッフのコーディネイトもしますし、撮影場所も探します」。
 撮影現場でも、五月女さんの仕事はボトルやグラスのシズルのスタイリングだけではない。実際に口にする商品なので、何かとあわただしい現場で気持ちのいい飲みカットを撮るためには、タレントさんへのケアも重要だ。

現場では流されないことが大切

 現場で最も難しいのは、撮影中に「待った」をかけることだと五月女さんは語る。
 「できれば監督さんにも出演者の方にも気持ちよく仕事をしてほしいし、時間に追われているのもわかっています。ピリピリと張りつめた空気の中では、クライアントさんでも、なかなか声を出しづらいこともあります。だからこそ、必要だと判断したら私がはっきり『待った』ということが、とても大切だと思っています。その場の雰囲気に流されてしまうと、結局、いい絵が撮れない。もちろん、スチルでもムービーでも撮影の流れを読んで、カメラ前に入るタイミングは考えながらですが・・・」。
 五月女さんがアシスタント時代からの付き合いだという、ディレクターの中島信也さん。
 「周りがあわてふためいていても動じない。その安心感たるや絶大なのですが、ロケで雲の動きに応じて一刻を争っているときには心の中で『いそげ!サオトメ!』と念じたり、ということもあります。でも現像して編集してみると映っているグラスやシズルが完璧なので、その時点で心の中の『いそげ』コールを撤回するわけです。20年間五月女さんは速度は変えません。でもシズルは格段にレベルアップしている。ということは“実速”は相当アップしているということ。これからも現場に立つと『いそげ!』コールを叫び続けると思いますが、頼りにしています」。

商品への想いを具現化したい

 シズルのスタイリングは、理解されなければ孤独な作業だと五月女さんは言う。ビールの泡やグラスの中の氷、缶に付いた水滴。どれも、15秒のCMの中の数秒の世界だ。しかし、そのシズルの残像が「おいしそう」「飲みたい」という気持ちにつながるからこそ、手を抜けない。
 「その場に私が呼ばれたことには、意味があるはず。『私がやる以上は・・・』というこだわりを持って仕事をしていきたい。私たちの仕事は、クライアントさんの商品への想いを具現化すること。自分たちの商品への強いこだわりを持ったクライアントさんに出会うと、がぜん、やる気が出ますね」。

(コマーシャル・フォト 2007年05月号掲載)

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